読書ロク

読んだ本の内容を、片っぱしから忘れてしまう自分のための記録

「揺るがず、逃げず、小さなことにこだわらず」

f:id:tsumugumu:20150207152826j:plain
「相手理解は聞くことからしか生まれないのです。(p.3)」
 
その"聞く"姿勢について、カウンセラーとして得た知見をもとに丁寧に分析しているのが、東山紘久(2000)『プロカウンセラーの聞く技術』である。
 
良い聞き手であるということは、"徹底的に"聞き手であることだという。
・聞かれたことしか話さない
・素直に聞く
・LISTENせよ、ASKするな
・言い訳しない
・説明しない
というように、筆者が唱える"聞き手"像は、とことんまで話し手を受け入れる。
そして、自分という存在をほとんど感じさせないのだ。
 
しかしこれは、無関心とは違う。
「相手の話は相手のこと(p.127)」と割り切りながらも、決して話し手を突き放すのではなく、相手への共感を示す。
「揺るがず、逃げず、小さなことにこだわらず(p.174)」、相手の感情をしっかりと受け入れられたとき、安心して感情を吐き出せる避雷針としての"聞き手"の役割をまっとうできるのだ。
 
これまでの2冊(佐々木圭一『伝え方が9割』、大嶋祥誉『マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書)は、発信することをテーマにしたものだった。今回のテーマは、その対となる、受信。
たまたまだが、これら3冊をこの順番で読めたのは幸運だったと思う。
 
 

クリシン×ロジシン

f:id:tsumugumu:20150207095051j:plain

「耳に入った言葉を書き記すだけのメモは、意味がない。
聞きながらも頭を回転させて、自分の考えや疑問点を書いていかないと、
結局ほとんど記憶には残らない。」
これは、ある経営者が講演で言っていた言葉だ。
以来、聞いた話の先を考えるということを意識するようにしている。
…とはいうものの、実際はなかなかとっかかりが掴めず、
依然として無意味なメモばかりが増えていくのだった。

前回の『伝え方が9割』が"いかに"効果的に伝えるかという思考術であったのに対し、
今回のマッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書』はその前段階、
"なにを"伝えるかの思考術である。

筆者はロジカルシンキングを「クリティカルに考え、ロジカルに展開すること」であるとし、
それぞれについて具体的なエピソードなどを踏まえて丁寧に説明している。
すべてに共通しているのは、
・目的を常に意識する
・思考パターンの枠を意識する
・問いつづける
という3つの基本姿勢。

そして3点目の問いかけのフレーズとして、"So What?""Why So?"を用いる。
これらはよく考えれば当然のことながら、なかなか意識されにくいものだ。
しかし、この"So What?", "Why So?"という2つの問いかけこそが、
思考を深めるための鍵なのである。

このことに気づけたことは、個人的には大きな収穫だった。
発信のシーンだけでなく、受信の際にも"So What?", "Why So?"を問い続けることが
メモの質を上げ、クリティカルな思考を育む一助となるはずだ。

大嶋祥誉(2014)『マッキンゼー流 入社1年目ロジカルシンキングの教科書』SBクリエイティブ
http://www.amazon.co.jp/マッキンゼー流-入社1年目ロジカルシンキングの教科書-大嶋-祥誉/dp/4797376988

「"お願い"は、相手との共作だ」

f:id:tsumugumu:20150207175936j:plain

『伝え方が9割』(佐々木圭一)を読んだ。
"NO"の反応を、伝え方だけで"YES"に近づける方法や、
感動を与える言葉選びのコツがたっぷり詰まっている。

それらを一言で表すならば、
「"お願い"は、相手との共作だ(p.87)」
に尽きる。

「デートしてください」も「締め切り延ばしてください」も、自分本位の要求が丸見えだ。
だから、これを一度相手目線で捉え直して、
「驚くほど旨いパスタの店があるんだけど、行かない?」
「クオリティを上げたいので、粘ることはできませんか?」
と言い換える。

相手の隠れた期待に自分の要求を乗せて、伝えるということ。
他者を思いやる気持ちがあってこそ成立するコミュニケーションだということを再認識した。

佐々木圭一(2013)『伝え方が9割』ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/伝え方が9割-佐々木-圭一/dp/4478017212

"北極星"という考え方

先日行ったワークライフバランスフェスタ東京2015でオススメしていただいた一冊、
『あなたが輝く働き方』(小室淑恵)。

すでに小室さんの他の本を何冊か読んでいたわたしには重複する部分もあったけれど、
いかにして今の小室さんが形成されたのかを知るにはいい本だった。

溌剌と過ごした幼少期とは一転して、
自分自身や"女性であること"の限界を目の当たりにして自信を失い、
筋金入りの"専業主婦志向"を持っていた小室さん。
それが、2人の女性との出会いをきっかけに
「女性が働きながら子育てできる日本をつくりたい」という強い思いを抱くに至る。

周りの環境に恵まれていたのは確かだろう。
しかしそれ以上に、大切な情報をしっかりキャッチして、
その上で次のアクションに確実に結びつける行動力が、
小室さんをここまで引き上げたんじゃないだろうか。

「(一番の近道を選べなくとも)"北極星"にたどりつけさえすればいいんだから、
道はいくらでもあるんじゃないか?(p.68)」
"北極星"を見失わずに、けれどそこへの近道に捉われすぎずに、
目の前の物事に真剣に向き合う姿勢を持ち続けることを大切にしたい。

小室淑恵(2013)『あなたが輝く働き方』PHP文庫
http://www.amazon.co.jp/あなたが輝く働き方-PHP文庫-小室淑恵/dp/4569761224