LEAN IN
これまで男性によって作り上げられ、動かされてきた社会のなかで
女性が自分の価値を発揮し、立場を築いていくということ。
正解がどこにも見えないなかで、彼女がエールを送ってくれている。
とても心強いメッセージの詰まった一冊だった。
*ステレオタイプ・スレット(固定観念の脅威)
「子ども時代に刷り込まれた男女のステレオタイプは、
生活の様々な場面で強化され、ついには自己実現的な予言と化す(p.34)」
*インポスター・シンドローム
女性特有の詐欺師感覚。
自分の成功を環境によるものと考え、失敗を自分自身に起因させる、
過小評価傾向が女性にはあるという。
これは、次の「ジェンダー・ディスカウント」と関連があると考えられる。
*ジェンダー・ディスカウント
「成功と好感度は男性の場合には正比例し、女性の場合には反比例する(p.58)」
女性は献身的であることが強く求められ、そのために他者への非協力が
男性以上にマイナスの評価をもたらすというダブルスタンダードが存在する。
これへの対処策としてサンドバーグは
「交渉の席につくときには、”自分のことを考え全員のために行動せよ”(p.67)」と唱える。
正当な理由を説明し、共通の利益に関心を示すことで
風当たりを緩和し、なおかつ自身の望む方向へ交渉を導くことができるのだ。
*ティアラ・シンドローム
良い仕事をしていれば、きっと誰かが気づいて冠をかぶせてくれるはず…
そう期待して黙っていても、チャンスを逃すだけ。
*感情
「ほとんどの女性が職場でなくのは悪いことだと考えている(p.125)」
しかし、感情を分かち合うことを通してこそ、人間関係は深められる。
「”冷徹なプロフェッショナル”の仮面をつけるより、
自分の真実を語り、個人的な事情を正直に話し、
感情は切り離せないものだと認めるほうが、
綜合的に見てメリットは大きいのではないだろうか(p.127)」
男性中心の社会の既存のルールが、必ずしもこれからの社会で合理的で正しいとは限らない。
既存のルールのなかで”悪”と名指されてきたものが、
もしかするとよい作用をもたらしうるかもしれない。
ルールをひっくり返すことは困難だ。
しかし、既存の価値を問い直し続けることなしには、わたしたちは豊かになれない。
*母親の管理者意識(maternal gatekeeping)/家庭責任意識
女性自身が、ステレオタイプから抜け出せない。
女らしさ、母親らしさの理想から、遠のくことを恐れている。
失格の烙印を押されることが怖くて、しがみついてしまう。
染みついた固定観念が、脅威としてまとわりつく(→ステレオタイプ・スレット)。
ベビーシッターにすっかりなついた息子を見てショックを受けるサンドバーグに、
夫はこんな言葉を投げかけている。
「息子の生活の中で両親がいちばん大切なのはわかりきっている。
だが日頃世話をしてくれる人に愛情を感じるのは息子の発育にとって好ましいことだ(p.192)」
彼のような夫をもつ彼女だからこそ、既存のルールに挑戦し続けられるのかもしれない。
*女性○○
グロリア・スタイネムの引用
「力をもつ者が名詞を獲得し、それが標準となる。
力のない者には形容詞が付く(p.197)」
*バイアスの死角
「長所や資質は差別を正当化するために操作される(p.213)」
女性が献身的であることは、長所として語られる。
しかしそれは、男性のように人の上に立つ女性を非難する言葉になる。
*機会コスト
相対的剥奪感が、女性を分断する。
一方を選択するためにもう一方を諦めた人たちは、
別の選択をした人たちを受け入れることに抵抗を感じてしまう。
それは、諦めた自分への罪悪感と、自身の選択に対する自信のなさが
他者への不合理な怒りとして表れるからである。
たくさんのヒントを、彼女は与えてくれた。
だからわたしは、考えることを辞めるわけにはいかない。
シェリル・サンドバーグ(2013)『LEAN IN-女性、仕事、リーダーへの意欲』日本経済新聞出版社