読書ロク

読んだ本の内容を、片っぱしから忘れてしまう自分のための記録

ちょっと今から仕事やめてくる

仕事を辞めたいとか
人生終わらせたいとか
そんなことを考えていたわけじゃない。
ただなんとなく、もやもやしていた。
 
だからだろうか。
タイトルに惹かれて思わず手に取った。
北川恵海『ちょっと今から仕事やめてくる』
 
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朝早くに起きて、家を出て、
数字に追われて、成果が出なくて、
お昼もゆっくり食べられなくて、
夜帰れるのは20時をまわって、
帰って寝るのは日付が変わってから。
毎日毎日繰り返し。
毎日毎日、己の無能さを思い知らされる。
 
怒鳴られたりはしないけれど、
主人公に今の自分が少し重なって
どんどん引き込まれていった。
 
結論は、
わたしって素直すぎるんじゃないかな
ということ(笑)
 
スーパーで食品を物色しながら
じわっと涙が溢れてきた。
 
もっと気楽に構えていていいんじゃないか。
そう思えた。
 
主人公の隆は、端から見ていてとても滑稽だ。
先輩にまんまと騙されて成果を横取りされ、
職場では干され、なのに
「先輩をこんなふうにさせてしまった隙の多い自分が悪い」
なんて自分を責めている。
騙すような先輩が悪いんだよ。
怒鳴り散らかす上司が悪いんだよ。
なのに、彼らが押しつける規範を無自覚のうちに内面化して
自分で自分に追い打ちをかけて苦しんでいる。
 
そんなの、気にしなきゃいいのだ。
自分をもっと信じてあげればいいのだ。
 
他人のことだからそんなことが言えるけれど、
さて自分はどうだろうか?
同じ落とし穴に嵌って、もがいているんじゃなかろうか。
 
もっと、気を楽に構えよう。
成果が出せないのは辛い。
だけれど、別に努力だけですぐ成果につながるとは限らない。
十分努力している、まだその時じゃないだけ。
強いて言うならば、インプットが足りない。
なにも持っていないくせに絞り出してアウトプットを試みている。
努力の方向が間違っているんだろう。
 
思いつめないで、ただ全力で仕事をして、
無理にしがみつかないで、
心と身体の健康に気を遣って、
たくさん笑って、たくさんぶちまけよう。
 
とてもいい本に出会えた。
これもひとつ、大事なインプット。

すべて、自分で変えられる

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「世の中のほとんどのことは自分で変えることができます(p.261)」

小室さんは、こう断言する。

「いきなりすべてを変えることはできませんが、

身の回りの小さなことを一つずつ変えていくことはできます。

そうすると、あなたの周りはどんどん変わっていきます(pp.261-262)」

 

政府を巻き込み、世の中をぐいぐいと変えていっている小室さんの

パワーの源は、なにか特別で派手なものなどではない。

地道で、堅実で、小さな、しかし積み上げれば大きな努力がそこにはある。

 

心身を健康に保つこと。

身の回りをすっきり片づけておくこと。

他者との関係性を大切にすること。

自分の夢や目標を、率先して発信すること。

 

これらは、ワーク・ライフバランスの考えと通ずるものである。

心にいつでも隙間をつくっておけるように、

まずは足下から見直していきたい。

 

 

小室淑恵(2012)『夢をかなえる28日間To Doリスト』講談社

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なぜ、虐待は起きるのか

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なぜ、虐待は起きるのか。

母親が極悪非道の人間だから?

いや、現実はもっと複雑だ。

 

帯には森達也さんのこんな言葉が書かれている。

「彼女は特別な誰かではない。

僕らの周囲に普通にいる誰かなのだ」

もっと言えば、彼女は

周囲の誰かですらなく、自分自身かもしれない、とも思う。

 

彼女の置かれた状況は、確かに特殊だった。

幼少期に母親からのネグレクトを幾度も経験し、

その後も仕事に没入する父親とは心理的な距離を感じながら

誰にも頼ることを知らずに育った。

問題に直面するたび、自分を自分から引き離すことでしのぐ、

解離という精神疾患を抱えて身を守った。

中学時代は非行に走り、性被害を受ける。

 

「早くママになりたかった(p.155)」

「自分が満たされなかった子ども時代を穴埋めしたい(p.155)」

「抱かれているあおいちゃん(娘)が、抱いている芽衣さん(本人)でもあった(p.159)」

「自分を丁寧に語ることができず、耳を傾けてもらえないまま離婚が決まった(p.189)」

「芽衣さんは決して相手に不満を表現しない(p.223)」

 

しかし、彼女がわたし自身、あなた自身ではないと、断言はできない。

「”溜め”を奪われた人たちは、追い込まれ、精神を病む。(p.201)」

育児の重みに押しつぶされて、つい子どもに手を挙げてしまう親がいる。

働いても働いてもお金にならなくて、追い詰められていく親がいる。

ほんの小さな何かの弾みで、簡単に”溜め”は失われうる。

そんな瞬間に、頼れる人がいるか。

 

孤独のなかで苦しむ人たちを、そのままにしておいてはいけない。

同じ悲しみを繰り返してはいけない。

彼女が、わたしが、あなたが、

社会から零れ落ちてしまわないために、なにができるだろう?

 

 

杉山春(2013)『ルポ虐待ー大阪二児置き去り死事件』ちくま新書

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LEAN IN

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これまで男性によって作り上げられ、動かされてきた社会のなかで

女性が自分の価値を発揮し、立場を築いていくということ。

正解がどこにも見えないなかで、彼女がエールを送ってくれている。

とても心強いメッセージの詰まった一冊だった。

 

 *ステレオタイプ・スレット(固定観念の脅威)

「子ども時代に刷り込まれた男女のステレオタイプは、

生活の様々な場面で強化され、ついには自己実現的な予言と化す(p.34)」

 

*インポスター・シンドローム

女性特有の詐欺師感覚。

自分の成功を環境によるものと考え、失敗を自分自身に起因させる、

過小評価傾向が女性にはあるという。

これは、次の「ジェンダー・ディスカウント」と関連があると考えられる。

 

ジェンダー・ディスカウント

「成功と好感度は男性の場合には正比例し、女性の場合には反比例する(p.58)」

女性は献身的であることが強く求められ、そのために他者への非協力が

男性以上にマイナスの評価をもたらすというダブルスタンダードが存在する。

これへの対処策としてサンドバーグ

「交渉の席につくときには、”自分のことを考え全員のために行動せよ”(p.67)」と唱える。

正当な理由を説明し、共通の利益に関心を示すことで

風当たりを緩和し、なおかつ自身の望む方向へ交渉を導くことができるのだ。

 

*ティアラ・シンドローム

良い仕事をしていれば、きっと誰かが気づいて冠をかぶせてくれるはず…

そう期待して黙っていても、チャンスを逃すだけ。

 

*感情

「ほとんどの女性が職場でなくのは悪いことだと考えている(p.125)」

しかし、感情を分かち合うことを通してこそ、人間関係は深められる。

「”冷徹なプロフェッショナル”の仮面をつけるより、

自分の真実を語り、個人的な事情を正直に話し、

感情は切り離せないものだと認めるほうが、

綜合的に見てメリットは大きいのではないだろうか(p.127)」

男性中心の社会の既存のルールが、必ずしもこれからの社会で合理的で正しいとは限らない。

既存のルールのなかで”悪”と名指されてきたものが、

もしかするとよい作用をもたらしうるかもしれない。

ルールをひっくり返すことは困難だ。

しかし、既存の価値を問い直し続けることなしには、わたしたちは豊かになれない。

 

*母親の管理者意識(maternal gatekeeping)/家庭責任意識

女性自身が、ステレオタイプから抜け出せない。

女らしさ、母親らしさの理想から、遠のくことを恐れている。

失格の烙印を押されることが怖くて、しがみついてしまう。

染みついた固定観念が、脅威としてまとわりつく(→ステレオタイプ・スレット)。

ベビーシッターにすっかりなついた息子を見てショックを受けるサンドバーグに、

夫はこんな言葉を投げかけている。

「息子の生活の中で両親がいちばん大切なのはわかりきっている。

だが日頃世話をしてくれる人に愛情を感じるのは息子の発育にとって好ましいことだ(p.192)」

彼のような夫をもつ彼女だからこそ、既存のルールに挑戦し続けられるのかもしれない。

 

*女性○○

グロリア・スタイネムの引用

「力をもつ者が名詞を獲得し、それが標準となる。

力のない者には形容詞が付く(p.197)」

 

*バイアスの死角

「長所や資質は差別を正当化するために操作される(p.213)」

女性が献身的であることは、長所として語られる。

しかしそれは、男性のように人の上に立つ女性を非難する言葉になる。

 

*機会コスト

相対的剥奪感が、女性を分断する。

一方を選択するためにもう一方を諦めた人たちは、

別の選択をした人たちを受け入れることに抵抗を感じてしまう。

それは、諦めた自分への罪悪感と、自身の選択に対する自信のなさが

他者への不合理な怒りとして表れるからである。

 

 

たくさんのヒントを、彼女は与えてくれた。

だからわたしは、考えることを辞めるわけにはいかない。

 

 

シェリル・サンドバーグ(2013)『LEAN IN-女性、仕事、リーダーへの意欲』日本経済新聞出版社

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潜在意識にまで透徹する思いを抱く

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尊敬する2人の方々にご紹介いただいて、気になっていた稲盛和夫さんの『働き方』。

印象的だったのは、先日読んだ『嫌われる勇気』で書かれていたアドラーの教えを、稲盛さんがしっかり実践していたことだった。
理論を理解することはできても
それを実行に移すことは非常に難しいとされるアドラーの哲学。
しかしそれが実践可能であることを、
稲盛さんは身をもって示している。

そしてもうひとつ。
「高い目標を達成していくには、"潜在意識にまで透徹する"ほどの、強い持続した願望を持つことが、まずは前提となるのです。(p.86)」
努力は誰しもがしている。
誰よりも努力して、誰よりも強く思い続けられたときにこそ、手が届かないと思われたような高みに到達できるのだろう。


「人生とは、連続する刹那」

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人生は登山だ。

そう喩えられることに慣れ親しんできたから、

苦しいときは山を見ては

「頭のなかを真っ白にしてただ登るだけでいいのなら、どんなにか楽だろう」

なんて考えていた。


しかしアドラーは、人生は登山ではないと言う。

「われわれは、"いま、ここ"にしか生きることができない(p.264)」

登頂を目指して、それを成し得たときにはじめて人生が完成するような生き方を否定し、

ダンスをするように生きる、

"いま、ここ"の刹那に強いスポットライトを当て、

"いま、ここ"を必死に生きることを提唱する。


他者の課題を内面化して悩んだり、

自己に過剰に執着をしたり、

未来や過去が見えるような錯覚に陥ったり、

そうやって余計なことを考える前に

"いま、ここ"で全力でダンスをせよ。


極端な思想のようにも見えるが、

わたしには、真理をついた考え方のように感じられる。

常識を覆しているわけではなくて、

ただ角度を変えてシンプルに捉え直しているだけなのだろう。

Amazon.co.jp: 嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え: 岸見 一郎, 古賀 史健: 本

答えは相手のなかにある

 
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意図したわけではないけれど、
またまた対話つながりの一冊。
コーチングの別の本を探していて本屋で見つけた、
伊東明『人を育て、動かし、戦力にする 実践コーチング・マニュアル』
 
ここでは、コーチングがごく簡潔に説明されている。
すなわち、
⑴答えは相手のなかにある
⑵相手のなかには問題や課題を解決できる能力がある
⑶その答えや能力を引き出すプロセスがコーチングである
とくに最初の2つはコーチングという場面に限らず、
人と接する上で常に意識をしておくべき原則のようにも感じる。
 
 
今回この本を読んで印象的だったことを2点。
 
ひとつめは、「なるほど」。
これは、自分の世界観を一旦手放し、
新しい視点の入り込む余地をつくるための魔法の相槌。
 
ふたつめは、「失敗から学ぶ」。
「その失敗がなかったら、何が学べなかっただろう?(p.89)」
これぐらいポジティブに構えられたら
失敗のし甲斐もあるというもの。
 

Amazon.co.jp: 人を育て、動かし、戦力にする実戦コーチング・マニュアル―すぐに使える260フレーズ!: 伊東 明: 本